青木正児氏のこの本。
酒の肴の話に始まって、大酒飲み、下戸、酒の色、など、古典を題材にした酒の話が盛りだくさんである。
大酒飲みではないが、それでも酒を嗜む一人として、この本は避けて通れなかった。
この本、知ったのは中野孝次氏の「『閑』のある生き方」で取り上げられているのを読んだ時。
40歳代の初めだった。
自分も歳を取ったら、青木氏のような日々を送りたいものだと思っていた。
その自分も、もう還暦を過ぎた。
で、相変わらず仕事と時間に終われ、慌ただしく暮らしている。
いつになったら、そんな暮らしができるのか。
心に残っている部分を引用する。
中野氏の本でも同じ箇所が引用されていた。
僕と同じように、この本にハマる人が現れることを、静かに期待している。
酒はもとよりわが性の愛するところ、酒を飲み、酒の書を著すことは、楽しみ中の楽しみである。酔叟近頃の日課は、晩酌して早く床に入り、ラジオを聴きつつ眠る。二時か三時頃に目が覚める。静かに書斎に座して物を書く。ほっこりすると、煙草代わりに瓢箪の酒を二杯か三杯飲む。飲み過ぎて睡くなると、また床に入ることもある。朝飯前にまた冷酒を小さいコップに少量飲むと、食欲を増進する。食後横になってラジオを聴く。とろとろとまどろむこともある。起きて早朝執筆した草稿を清書することもあり、読書することもある。午後は舌耕に出かけることもあるが、人を訪問することは殆どなく、散歩することも少ない。こうしてできたのがこの本である。
「酒の肴・抱樽酒話」 青木正児、岩波文庫 p230
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