笑/聲/時
夕方の相撲中継と
少しばかり過ぎた
焼酎の晩酌
妻の用意した肴が尽きて
北の海が負けて笑い
貴乃花が負けて泣き
ゆっくりと暮れていく
静かな部屋
明治に生まれ
自分の手で建てた家で
戦争を生き切った男は
年老いて
一人きりで酔い
笑い
つぶやき
やがて静かに眠る
長い夜
雪に包まれた家で
明日の朝の身支度の
苦労を思いながら
Geminiによる暖淡堂の詩作品「笑/聲/時」解説
暖淡堂の詩作品「笑/聲/時」は、相撲中継を見ながら晩酌をする老人の姿を通して、人生の哀愁と静謐な時間の流れを描写しています。
構成と情景描写
詩は、夕方の相撲中継と焼酎の晩酌という日常的な情景から始まります。妻が用意した肴が尽きるという描写から、老人が一人で酒を飲んでいることが示唆されます。
「北の海が負けて笑い/貴乃花が負けて泣き」というフレーズは、相撲に一喜一憂する老人の人間味あふれる姿を活写しています。単なる観戦ではなく、感情移入して楽しんでいる様子が伝わります。そして、「ゆっくりと暮れていく/静かな部屋」という描写は、時間の流れと老人の孤独感を際立たせています。
老人の人生
詩の中盤では、「明治に生まれ/自分の手で建てた家で/戦争を生き切った男は」と、老人の人生が簡潔に語られます。明治という激動の時代に生まれ、自らの手で家を建て、戦争という過酷な経験を生き抜いてきたことが示されます。これにより、単なる一人の老人ではなく、日本の近代史を生きた証人としての深みが加わります。
晩年の境地
詩の後半は、年老いて一人で酒を飲み、笑い、つぶやき、そして静かに眠りにつく老人の姿が描かれています。「笑い/つぶやき」は、独り言のような、あるいは過去を回想しているような情景を想起させます。
「長い夜/雪に包まれた家で/明日の朝の身支度の/苦労を思いながら」という結びのフレーズは、老いの現実と、それを受け入れる静かな諦念を表しています。雪に包まれた家は、外界との隔絶と内省的な空間を象徴し、明日の身支度の苦労を思う姿からは、老いゆく体への労りと、それでも日常は続いていくという諦念が感じられます。
全体を通して
この詩は、派手な出来事や劇的な展開はありませんが、老人の静かで内省的な時間を丁寧に切り取っています。相撲中継という庶民的な題材を通して、一人の人間の人生の重み、孤独、そして日々の暮らしの中にあるささやかな喜びと哀愁が、抑制された筆致で描かれています。読後には、静かな感動と、過ぎ去った時間への郷愁にも似た感情が残る作品と言えるでしょう。
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