こんにちは、暖淡堂です。
暑いですね。
涼しいところで読書が、好ましい、理想的な過ごし方です。
で、先ほど読み終わったのが、島田荘司さんの「踊る手なが猿」。
光文社文庫版で1993年11月に初版発行。
化学企業に入社して2年目の晩秋ですね。
ミステリーの短編集です。
四作品収められていますが、今回再読して一番楽しめたのが「暗闇団子」。
舞台は江戸時代になりますが、内容はぜひ作品を読んでいただきたいと思います。
現代に現れた謎を、江戸時代の出来事の中で解いていく、ミステリーであり、詩情あふれるファンタジーでもある作品です。
今年の大河ドラマでも舞台になっている浅草、吉原、その辺りの江戸時代の様子が詳細に書き込まれています。
江戸の交通、川沿いの匂いや音のこもりかたの描写など、島田さんの小説巧者ぶりが発揮されています。
ミステリーは好きだけど、時代物はいまいち、という方も、この作品をきっかけに時代物の本を手にしていただければと思います。
逆に、時代物は好きだけど、ミステリーはちょっと、という方も、この作品から、読書の範囲を広げられてみてはいかがでしょうか。
この作品のラスト近くで、主人公の四方助は涙を流します。
この後、物語は静かな感動を呼ぶシーンへ。
四方助はぽろぽろと涙が出た。花魁が柳原橋本町へやってきたのが去年の師走、今は七月、わずか半年足らずの、短い夢だった。夢が終わる夜に、あたりの景色がやけに綺麗だった。綺麗でたまらず、それに四方助は泣けた。
「お江戸の夜がこんなに綺麗だなんてなあ、今の今まで気がつかなかったぜ…。いつまでもこのままで、いてほしいよな。百年経っても、千年たってもよ…」
意味もなく、四方助はそんなことを言った。実際、涙を通して滲むその夜の江戸は、夢幻の境地に漂うようだった。
「暗闇団子」より引用。島田荘司、「踊る手なが猿」、光文社文庫、1993年、p293。
😊*****😊
僕の書棚の結構広いスペースを島田荘司さんの作品が占めています。
その次が京極夏彦さん。
その次がエラリークイーン。
その次くらいに北方謙三さん、あたりかな。
これらを時々引っ張り出して、読んでいく。
結構、豊かな時間になりそうな気がします。
まずは個人開催島田フェスから。






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