時を/切る
夏の午後
音のない空間で
止まる思考
呼吸の音
どの方向でもない方へ
僕の思いは振り返る
その、見ていない視線の先に
ただ青い夏空
転げ出した
小さな心の欠片は
時の流れの
水面を切って
トントントン
トン、トン、、トン、、、と
向こう岸に向かって跳ねて
落ちて
沈んだ
と、
沸き上がるような
蝉の声
水飛沫の響き
そして
僕を呼ぶ声
Geminiによる解説
暖淡堂 詩作品「時を/切る」解説
暖淡堂の詩作品「時を/切る」は、夏の午後という具体的な情景の中で、内省と外界の繋がりを繊細に描いた作品です。静寂の中で思考が止まり、自己の内面へと深く潜り込む感覚が、詩全体に静謐な空気をもたらしています。
詩は「夏の午後 音のない空間で 止まる思考 呼吸の音」という描写から始まります。これは、外界の喧騒から隔絶され、思考が停止し、ただ自己の存在を**「呼吸の音」**という根源的な感覚で捉えている瞬間を示唆しています。この冒頭は、読者を一瞬にして詩の世界観、つまり静かで内省的な空間へと引き込みます。
続く「どの方向でもない方へ 僕の思いは振り返る その、見ていない視線の先に ただ青い夏空」という部分では、思考が特定の方向性を持たず、過去や記憶、あるいは漠然とした**「ただ青い夏空」**という非具体的な対象へと向かっている様子が描かれています。「見ていない視線」とは、物理的な視覚ではなく、心の目で捉える風景、あるいは無意識下の領域への眼差しを示唆しているのかもしれません。ここで描かれる夏空は、広大で普遍的な存在であり、内省の対象として静かに存在しています。
そして、「転げ出した 小さな心の欠片は 時の流れの 水面を切って トントントン トン、トン、、トン、、、と 向こう岸に向かって跳ねて 落ちて 沈んだ」という表現は、この詩の核心をなす部分と言えるでしょう。**「心の欠片」が、まるで水切り石のように「時の流れの 水面を切って」進む様子は、思考の断片や記憶が時間の流れの上を跳ねていくイメージを喚起させます。その音が次第に小さくなり、最終的に「沈んだ」**という結びは、その思考や記憶が意識の奥底へと消え去る過程を、視覚的、聴覚的に鮮やかに表現しています。
しかし、この静かで内省的な沈黙の後、詩は突然外界へと開かれます。「と、沸き上がるような 蝉の声 水飛沫の響き そして 僕を呼ぶ声」という外部からの刺激が、鮮烈な音と共に現れます。これは、内面的な世界から一転して、現実世界へと意識が引き戻される瞬間を描いています。**「蝉の声」や「水飛沫の響き」は、夏の午後という具体的な情景を再認識させ、最後に「僕を呼ぶ声」**によって、詩的な内省から日常への回帰、あるいは他者との繋がりを暗示する余韻を残しています。
この作品全体を通して、暖淡堂は「時を/切る」というタイトルが示すように、流れる時間の中に瞬間的な意識の区切りや、内面と外面の境界線を繊細に描いています。音と静寂、視覚と内省的な感覚の対比が、夏の午後の独特な雰囲気と、その中で展開される心の動きを見事に表現しており、読者に深い共感を呼び起こす詩と言えるでしょう。
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